タイムトライアル2017③〜痛みとの共存〜 12/31
行けども行けども登り坂。
自転車で経験済みだから覚悟はできていた。
それでもやはり長く、険しかった。
ナカイさんは杖を使い始めた。
アズーサはまだしんどいと感じるまで達していないらしい。怪物め!
アズーサと合流してから1時間45分、8:58、ひたすら登り続けてやっと道幅の狭くなるエリアの入り口にたどり着いた!
ここから9km進めば西部林道を突破できる!!
このときはフリーターが一番遅くて、必死に2人についていった。
ここから下りも出てくるから少しは楽になると思っていた一行。
しかし、その考えは大きな間違いだとすぐに気付く。
この時点で痛みに差はあるものの、みんなが足裏のマメに苦しんでいた。雨で濡れた皮膚がふやけて、一歩進むたびに足裏に痛みが走る。
そんな状態で差し掛かった下り坂。
ぐうおおおおおおおおおおおお!!!!!!
なんじゃこの痛みはぁぁぁ!!!!
下りだから靴の中で足が若干つま先側に動くんだけど、足裏の皮膚だけはその場に留まって、皮膚の内側の肉だけがズレるそんな感覚。
ナカイさんもアズーサも下りのつらさはやはり想定外だったらしい。
登りたい……永遠に登りでいいですから…神様………
下り坂を与えてくれたことに関して神に感謝することは一度もなかった。
一行は後ろ向きに歩いてみたり、横向きに歩いてみたりととにかく負担のかからない歩き方を見つけ出そうと模索した。
しかし、有効な歩き方は見つからずここでペースは明らかに落ちた。時速3kmほど。
「申し訳ない。俺だめかもしれない。」
ナカイさんだった。
こんな言い方だったかはっきりとは覚えてないけど、確かにリタイヤをほのめかすことを口にした。
マズい!ナカイさんがピンチだ!
このとき1人として余裕のある者はいなかった。
あまりにしんどいので気を紛らわせようとフリーターは音楽を聴き始めた。
これがどハマり!!キマった!!!
音楽を聴いたらまだまだ元気な上半身がノリノリになった!
ノリノリのリズムでテンポよく下り坂を歩いていく!!
痛んでた右足首はどうなったかって?
とっくに行っちまったよ。痛みの向こう側。
痛んで復活痛んで復活ってサイクルを6回くらい繰り返したら消えたよ。
フリーターは西部林道を歩きながら、痛みの向こう側とは何なのか、その真理をずっと考えていた。
そして答えにたどり着いたんだ。
痛みの向こう側って、
ただ麻痺してるだけじゃねえかよ!!!!
来ちゃいけないとこだよこっち側!!!!
でもなぜ?痛みの向こう側に来れたことに誇りを感じる自分がいるよ?
危ねえよおお。。この競技危険すぎるよぉぉぉ。。。
そうそう、それで足裏ね!
テンポは良くなったけど足裏だけは焼けるように痛い。この痛みだけは向こう側があるとは思えなかった。
だからフリーターは向こう側を目指すのを諦めた。
むしろこの痛みを全力で受け入れる!!
"痛みとの共存"
私はそう呼んだ。
痛みすら愛おしい。
痛みとの共存という生き方を心得たフリーターは覚醒した!
とうとう2人を抜き先頭を歩き出した!
「ナカイさん!音楽いいですよ!音楽で1回キメましょう!!」
絶対これでナカイさんも覚醒するとフリーターは確信していた!!
5分後
「キマらねえ……」
ナカイ氏、絶体絶命!!!
どうしよう!このままじゃナカイさんがリタイヤしてしまう!なんとか励まさないと!!
あ!!あの看板は!!
「ナカイさん!宮之浦港まで30kmですよ!ということはとまり木まであとフルマラソン1回!!いけますよ!!」
「無理」
無理かーーーー!
フルマラソン1回って言い方確かに全然救われないわ!!
「とりあえず西部林道抜けましょう!!」
これには反応した。
「西部林道をぶっ倒す!!!」
よしよしキタキタ!!
行こうぜー!!!!
一歩、また一歩。確実にゴールは近づいている!!